映画・曲・本の感想

KUROFUNE『Over The Seven Seas』第一印象(KUROFUNEは優しさと誠実さで出来ている)

本日発売の、KUROFUNEのシングル『Over The Seven Seas』が昨日届きました。
前提として、KUROFUNEは『ドリフェス!』というアニメ・ゲーム(二次元)・三次元で展開している五次元プロジェクトにおける、主人公のライバルグループであり、
アニメは二期を終了、ゲームは今年の5月に終了しています。そして、このプロジェクトは、10月21日に武道館で「ファイナル」を予定しています。
つまり、KUROFUNEとしての活動は、10月以降は見込めないであろうことが見えていて、このシングルは3rdシングルであると同時に、ファイナルシングルである可能性が非常に高いのです。
2010年にa-haが解散したとき、「え、解散するコンサートになんで私行かないんだっけ」という気持ちでノルウェーまで行ってしまった自分ですが、その時と大きく違うことが一つだけあります。
それは、a-haが解散しても、モートンがソロ活動をやるのはこれまでの彼の行動パターンから自明で、ソロで歌ってくれれば私の大好きな歌声は失われることがないのに対し、私はKUROFUNEは「勇人と圭吾二人のハーモニー」が好きなので、10月を過ぎたら、それがずっと失われてしまうであろうということです。

アプリが終了する直前、勇人が「楽しい船旅だったぜ」みたいなことを「さよならメッセージ」として発言していて、あまりのことに呆然としたのですが、結局カードのメッセージという形で「新しい船旅についてこい」というようなのが追加され、公式で矛盾を起こしているかのように見えたことがありました。
これに対して、圭吾はさよならメッセージでも、追加されたメッセージでも「僕についてきて」(という意味のこと)を言っているのが印象的でした。
あー 何が悲しいってアプリ起動してそれ確認できないのが悲しいですね。
それは、さておき。

ここまでが前提として、第一印象です。

『Over The Seven Seas』

アプリが中国で配信されることを「新しい船旅」としていることを前提に聞きました。
KUROFUNEは終わるわけではない、新しい船旅に出るんだという気持ちが見える歌詞でした。
あと、KUROFUNEの成長も。
ドリフェスのトップを取りに行くために作った曲『Arrival -Sail Away』では、『塗りつぶせPaint Black』だったのが、この歌では『虹のように綺麗なScene 描いた地図染めよう』ですよ。同じように、未来を一緒に作っていこうぜってファンに問いかける歌なのに、なんという穏やかな曲なんでしょう。
これは、これまでのいろいろを経て、Dear Dreamを敵から仲間にして成長しなければ、出来なかった歌だと思います。
ただ、私はちょっと寂しいかな。孤高のKUROFUNEだったのに、7人グループのKUROFUNEに見えてしまうのが。
しかし、七つの海を越えたところにあるなら、それも糧にして、もう一つ上を目指すって思えばいいのか。

別の側面として、これまで「夢を越えていけ」(夢はおそらく自分の夢そのものとライバルDear Dreamの両方と思われる)と歌っていた彼らが、今度は「7つの海を越えて行く」と羽ばたいていくのは、すごく嬉しい。
ただ、「そうはいっても、アプリ終わっちゃったじゃん。アニメもさ… 10月過ぎたら彼らと会えないしさ」と切ない気持ちになるわけですが、そこに次の曲『Ring』ですよ

今回のソロは、戸谷さん(圭吾)と株元さん(勇人)が、こういう思いを伝えたいと決めて作られたと話されていましたが、アニメがあるとしたら圭吾作詞、勇人作詞になるのでしょう。

『Ring』

アプリの終了時期も、圭吾も戸谷さんも何かにつけて「ずっと僕たち(俺たち)についてきて」と言っていました。
まだファンに終了がしらされていなくて、彼らだけが最後になると思っていたパシフィコですら。
もともと、KUROFUNEでは圭吾派で、戸谷さんも圭吾を通して知ってファンになっていたのですが、この2月からの色々を経て、圭吾と戸谷さんの融合っぷりに「プロだな」「優しいな」と感じ、より好きになりました。
その、「圭吾と戸谷さんの好きなところ」が余すところなく発揮されてしまったのが、この作品でした。
泣きました。泣いてる人がいるらしいって聞いてはいたけど、泣いてしまいましたよ。
『Over The Seven Seas』に感じる、「そうはいっても、アプリ終わっちゃったじゃん…」という思いを、まさか、その次に配置されている曲で諭されるとは。
最初の数行はね、腐女子らしく(笑)、「勇人へのラブレター?」と思っていたのですが、読み進め・聞きすすめていったら違いました。

これは上手く言葉にならないのですが、ストーリーとしてのKUROFUNEは世界デビューしていく。
しかし、アプリのKUROFUNEにはもう会えないし、10月21日を過ぎたら三次元のKUROFUNEにももう会えないかもしれない。
この矛盾。五次元であるからこその矛盾と、五次元であるからこその切なさ。

この曲は、私は、そういう意味で「アプリの中に閉じ込められた存在の圭吾」と「戸谷さん」によるメッセージに感じました。
そもそも、思ったんですよ。アプリの追加されたメッセージの時に、「これ、戸谷さんが考えたメッセージじゃないの?」って。

戸谷さんはエゴサーチしないと言っていたけど、あのアプリが終わるという話が出たときの、ファンの悲鳴をとても心を痛めて聞いていたのではないかと。
いつも、誰よりも冷静でいようとしているのが垣間見える反面、まだ続けたいという自分の思いと、ファンにどうにか気持ちを届けたいという思い。
私個人としては、先日発売されたフォトブックでの様子も含め、一番二次元と同化してるのが戸谷さんだと思っているわけです。(圭吾になりきってフォトブックにもその付録の動画にも映ってる)。

「日々に流れしまい、約束が遠く感じられても」の部分。「時が止まってほしいだなんて、ねぇ、言わないでよ」の部分。特にこの二カ所が、「そうはいってもアプリ終わっちゃったじゃん、ライブが終わったらKUROFUNEに会いに行けないじゃん。D4シアターが海外に出来るっていうなら会いにも行けるけどさ…」というこちら側の思いに対する、彼ら(アプリの圭吾と戸谷さん)なりの慰めというか、思いというか。
ここで泣きました、本当に。
「旅だっていく(未来という夢は)先にある、ついてきてよ」という部分がまさに、ストーリーとしては続いてるんだよ、KUROFUNEは圭吾はプリンセスを置いて行かないから信じてよという風に聞こえます。
その反面、「想い出を響かせていこう」の部分は、まさにリアルの部分で、もう想い出になってしまうというのを肯定している矛盾。
ただ、その両方が真実だから聞いてる方は困る。そして、敢えて『想い出を響かせていこう』といいつつ、ずっと一緒にいて欲しいという歌詞は、戸谷さん自身が、「ドリフェスR2!」でもいい、このプロジェクトをまだ続けたいという思いがあるのではないかと、そう感じずにはいられない部分でした。

そして。
圭吾は王子キャラだから、『俺』とはファンの前では言いません。素では言うけど。
でも、コンサートの中では戸谷さんが熱くなってくると『俺』というし、きっと二次元のKUROFUNEもライブでは圭吾が「俺」って言っていて、あの世界のファンは「王子から俺キャラになるのがいいわ」と思ってるんじゃないかと。
そう思ってるんですが、歌詞の最後のほうに一カ所でてくる自分の呼称が「俺」なんですよ。
これがまさしく、「素の圭吾」が歌っているという感じをまた醸し出していて。
更に立ち返るとタイトルが「Ring」。リングといえば、婚約指輪・結婚指輪。約束の指輪。
「約束が遠くに感じ」の約束から来ているのだとはわかりますが、あえて「プロミス」とか「誓い」とかにせず、「指輪」をプリンスらしく英語にして『Ring』とするところが、もう圭吾らしくって。
他の箇所も歌詞は全てよくて語り尽くせないのですが、とにかく、まだ一度しか聞いてないのに心に刻まれた曲になりました。
実際の作詞は松井さんなわけですが、本当に松井さん、素晴らしい歌詞をありがとうございます
戸谷さん、圭吾ありがとう!!というのが今の思いです。歌詞カード見直すだけでも泣けます…。

『Singin’ Is Alive』

『Over The Seven Seas』は『Over The Rainbow』から来ているそうですが、『Singin’』といえば『in the rain』ですよね。
今気づきましたが、Rainbowってその名の通り雨の後にしか見えないもので、それをタイトルのベースにした歌と、この『Singin’…』も『in the rain』をベースにしたタイトルなら、どちらも雨をキーにしてることに。
KUROFUNEといえば、雨。もしかして、そこからこのタイトルになったのでしょうか。
勇人ってずっと道標探してたじゃないですか、
「狂いのない羅針盤を持っても、宛のない旅じゃ意味なんてない」とか、「目指す場所さえも定めないで航海したって意味なんてない」とか。
少しずつ、圭吾を光にたとえながら進んできた勇人が、目指す場所が君の為に歌うってことが目指す場所であり、道標なんだって答えを出して…
なんか、乙女ゲー風にいうと、『Whole New World』のエピローグ編彼氏目線的な曲だなと。
あ、決してBL的な意味ではなく、ファンをどう思ってきたか、圭吾をどう思ってきたか、これまでの曲はどんな心情で描かれたものだったのかを垣間見えるという意味です。
圭吾の曲が、圭吾が海辺で彼女を慰めているような切なげなMVを頭に思い描いてしまうのに対して、こちらは、勇人がライブハウスで歌うシーンが浮かぶ感じ。
「叫べばいいだけ」って言ってた人が「(自分が)叫んでも届かなかった理由」がわかったと。

この曲は株元さんが、ファンに対してであり、圭吾に対してであり、戸谷さんに対してであり…みたいな感じのことを言っていましたが、そう捕らえると、やっぱりいわゆる「彼氏目線ストーリー」なのだと思います。しかし、すごいのは勇人らしく、言葉はそれほど多くないのに、本当に短い言葉で大事なことは全て語り尽くすとうスタイルです。さすが…。
「船の女」のうち「黒石勇人の女」にはたまらないだろうと思います。

圭吾の曲が優しさで出来ているなら、勇人のこのソロは誠実さで出来ていると思います。
ホント、KUROFUNE最高すぎる。

『White Pavement ーKUROFUNE ver-』

この曲は既存曲ですし、アプリにもあったけど。この曲を配置した理由って「どこからやってきてどこへいくのか」っていうのがKUROFUNEの基本路線だったものに合致しながら、最後の「やがてくる朝の中へ、歩こう」の進んで行く感じなんだろうなと。
しかし、アプリにあった曲でプレイするのが好きだったから、この曲を聴くと余計アプリが恋しくなってしまう。
それで、切なくなって『Ring』を聞いて泣くという無限ループになりかねない…。

それにしても……
ここまで良い曲そろえて新曲だよって出してきて、恐らく武道館でこれを披露して、それでなぜドリフェス!終了なのか。
やっぱり意味がわかりません。
いや、中国での展開の仕方が売り切りっぽいなとかは思ったりするんです
でも、万が一にも望みがあるなら、なんでもいい、VRライブの続編の有料リリースでもいいから、続けていってほしい。

これは、賛否両論だと思うけど、三次元はそのまま活動してもらって、毎月とはいわないけど、三ヶ月に一度くらいの頻度で、いや、半年に一度でもいいから新作アニメでその後の彼らを追うという流れがほしい。
半年に一度アニメでその後を追って、一年に一度の頻度でDMM VRシアターで二次元ライブ(新作)が見られたらいいのにと思うのです。
アプリがもう継続できないなら。

ちょっとしんみりしてしまいましたが、作詞の松井さん、本当に素晴らしい曲をありがとうございました。

Morten Harket.jp (http://www.morten-harket.jp/)の中の人。 二児の母で、フルタイム勤務しつつ、ノルウェー語の勉強をしています。 現在、NORLAからサポートを受け、ノルウェー語の詩の翻訳を実施中。

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください