日常/心

何が悪いか解らないのが一番怖い

少し前になるけれど、クローズアップ現代で道徳教育の特集をしていた。
小学校で道徳が必修となり、その中では国が決めた22のテーマを教えなくてはいけないということ、内容に教師が戸惑っているという放送だった。
その中で、「お母さんの請求書」という話があった。テーマは「無償の愛」だそうだ。
お手伝いをした僕が請求書を出すと、お母さんもいつものお母さんの家事について請求書を出す。しかし、それはゼロ円だったという内容。
これについて、道徳で、「なんでお母さんはゼロ円としたのか」というテーマだった。
一人の男の子が、「お母さんは、本当は家事の代金を欲しいけど、ゼロ円と敢えて書いた」と発言すると、教室はざわめき、教師は
「でも、家事の代金欲しいなら100円でも書いたらよかったのに、書かなかったんだから」と返し、その子は泣いてしまっていた。
その子の親は共働きで、母親は外で働いたらお金が貰える。しかし、家事だと貰えないということについて、本当は欲しいのではないかと思いやったものだった。
先生はフォローしていたけれど、この番組で顔出ししている。
つまり、この先生はこの子に「お母さんの働きはゼロ円で当然」と返してしまうことの「何が悪いのかわかってない」のだと思った。
解っていたら、罪悪感があったら、顔出ししないだろうから。

私は昨今の働き方改革で「ワークライフバランス」というときに、すぐに「仕事と家庭の両立」に起きかえ、なんアンラ『仕事と家事の両立』に女性だけなってしまうことに違和感を感じている。私からみると、安倍の「女性の活躍」は「男性は今まで通り。女性は家事も育児も全部頑張って。だって子に対しては母性愛、夫に対しては愛があるでしょ、ならできるよね」と言ってるようにしか感じていないのだけれど、この番組を見て、その思いを更に確信した。
こいつの言ってる女性活躍って…と。
「女性は男性の我が儘を受け入れてくれる存在、綺麗だねって褒めたら喜ぶからそれでOK」みたいな通念だけで動いて貰っては困るのだ。
無償の愛が家事とか馬鹿馬鹿しい。
勿論、家族のために考えられたバランスの良い食事は愛故のものだけれど、じゃあ、忙しくて料理が出来なかったら愛がないのか?
無償の愛って、家事をするとか金を稼ぐとか、そういったことではなく、相手を思いやる気持ちそのもののことでしょう。
そして、道徳で敢えて家事=ゼロ円というのを「無償の愛」に結びつけるのは、どこか富国強兵時代の歪んだ押しつけを感じて私は怖い。

そう思っていたら、その翌日、TOKIOの山口の事件が報道された。
私が一番怖かったのは、彼が「何が悪いかわかっていない」ことだ。「事件になるとは思っていなかった」と。
酒がどうこうではなく、彼は「酒を飲んで後輩を呼び出し、セクハラ発言をする、キスをする」ことの何が悪いかを解っていない。
これは、多分、芸能界だからという特殊事情ではなくて、「この世代故に」わかってないのだと私は思う。
私は彼とはほぼ同世代だ。小学校の頃、スカートめくりが流行った世代でもある。
それはマイッチング・マチ子先生をみた、10歳くらい上の世代が始めた悪しき悪戯であるけれど、これは本当に酷かった。
「やめてよ!」といえば、「誰がお前のスカートなんかめくるかよ、ブース。偶然手が触れただけだろ。な、こいつのスカートなんてめくるわけないよな(げらげら)」
ブルマをはいていれば「体育の授業でもないのに、ブルマはいてるとか。馬鹿じゃね」
友達がされてるのを止めに入れば「嫉妬乙」
このスカートめくりに対する正しい反応は「きゃー、のび太さんのエッチ」であって、それ以外許されない感じ。
お察しの通り、今の痴漢に対する反応と同じだ。

80年代から90年代、芸能界では森繁久弥がお尻をすぐ触るとかっていうのを女優さんが嬉しそうに発言していた。
最近話題になったアラーキーも、セクハラ発言を続けていた
和田勉も、年中テレビで女優と寝た発言をしていた。非常に不愉快だった。
山口氏が、ジローラモに女子高生をさして「この中で誰が好みですか」って聞いていたというのがRTでまわってきたけど、
「この中で誰が好みですか」っていうのは、ジャニーズの各番組でもよく見る光景だから、恐らく何が悪いかわかってないのだろう。
山口氏に限らず、女性記者との会話の中でセクハラ発言を連呼した福田次官も麻生さんも、セクハラにNoというWe tooに対して
「セクハラとは縁遠い方々」と発言した長尾氏も、本当に何が悪いか解ってないのだろうと思う。
今まで怒られなかったから大丈夫だったことを怒られて、あるいは周りがオッケーで通ってきたことが通らなくなって、ナチュラルに驚いているのではないだろうか。
正直、今までが異常だったので、こういった人たちが許されない世の中になったことは、素直に「ざまーみろ」と思う。

でも、Twitterでハニートラップだとか、「男の家に行く女子高生が悪い」という人がいることは、「何が悪いかわかってない、咎めない」ことでもあり、
本当に怖いと思う。おかしいでしょ、両方男性として、上司に呼ばれて行ったらいきなり殴られたら、「上司の家になんていくからだ」と言われたらおかしいでしょ。
というか、去年の「この禿げー!」事件では、男性は相当憤っていたのに、男女逆転した途端、『行く女性が悪い』だの、『リークするのは駄目』っておかしい。
そこに矛盾を感じないなら、世の中怖すぎる。
女性は自衛しろというけれど、それで女性専用車両が出来たら「優遇だ」といって敢えて乗ったりするし、この国の女性に対する態度は酷すぎる。
お酒を飲んでいたとはいえ、自分のやらかしたことが犯罪だと思わなかったことが何より怖い。
そのスカートめくり文化の人達を父世代に持つ若者が、同じことを継承しても不思議ではないし、冒頭の「無償の愛」とやらを女性全般に押しつける道徳がまかり通ったら、本当にこの国で女性は生きづらいことになると思う。

ふと思うのは、この国の男性はこれまで「フォローされすぎた」のではないかということ。
スカートめくりをよしとして許されてきた分、「優しい虐待」されてきたのと同じなのではないだろうか。

私は、道徳を義務化するのなら、「女性の身体に許可無く触れてはいけない、昔にあったスカートめくりなどはもってのほかである」というのを教えるほうが先だと思う。何が悪いか解らないのが一番怖い。2020年のオリンピックで恥をさらさないためにも。

Morten Harket.jp (http://www.morten-harket.jp/)の中の人。 二児の母で、フルタイム勤務しつつ、ノルウェー語の勉強をしています。 現在、NORLAからサポートを受け、ノルウェー語の詩の翻訳を実施中。

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