1988年宝塚星組「戦争と平和」感想
1988年、今から30年ほど前、チケットが取れず残念だった作品「戦争と平和」がスカイステージでやるということで、早速録画して見ました。この作品、スカイステージでやるのは2回目なのですが、以前のときは見そびれたので今回やっと30年の時を超えて見られるようになったというものです。同じくチケットが取れなかった「紫子」(峰さんトップ時代)も、スカステで、こちらは大分前に録画して見ることが出来ていますが、この「紫子」の風吹、「戦争と平和」のアンドレイこそ、日向薫(ネッシーさん)に落ちたきっかけが最も多いと言われてる作品だったので、ホントに楽しみでした。
峰さん時代から娘役トップをやっていた南風まい、そして初代オスカル榛名由梨の退団公演でもあるということで、植田先生の豪華さが良い感じです。調べたところ、本来の作品はこの作品で榛名さんが演じたピエールが主人公ということで、なるほどなと思いました。
ということで、以下、作品の感想です。
ナターシャ、いわゆる箱入り娘で男性への耐性がないのはわかる。それでも、あまりにも浅はかすぎやしないか。アンドレイと結婚って舞い上がってた割にあっさり、既婚のプレイボーイに既婚と知らずに陥落。既婚と知った瞬間、やっぱりアンドレイこそ運命の人だった、でも許してなんて貰えない…って、そりゃそうだ。その割に、ピエールが「私がもしもっとイケメンで若かったら」と告白したら、それを心の支えにしちゃったりする。悪女ではないけれど、若さ故としても、ちょっと同情しにくい。いや、自分の愛する人が死にそうで、それも自分が愚かな事をしたが故に死地に赴いてのことで、意識を戻しても許されないのが辛いのはわかる。でも、彼女が本当の意味で愛を悟ったのは、アンドレイが運ばれてきたのを看病しようと決めたときよりも、ピエールや、彼女の浮気相手アナトリーがいつの間にやら心を入れ替え、戦争に行くという報告に来たときではないか。南風さんの歌のうまさと可憐さ、演技のうまさで、彼女が主人公と言われる作品なのはすごく理解できるけど、ナターシャはあまり好きなタイプではないな…。
ナターシャを陥れた超本人アナトリーは麻路さん。この作品の麻路さんの演技、私は好きです。麻路さんは作品によっては台詞が若干べたつく(しゃべり方がモサモサしてるように感じる)のが苦手なのですが、これはさっぱり演じてました。「アポロンの迷宮」の新聞記者同様、割と好きな演技でした。でも、彼が改心したタイミングがわからないので、足を怪我してナターシャのいるところに来ても、「あ、こいつまた何か悪さしにきたのかよ」と思えてしまうのが残念。テレビ放映もののカットなので、もしかしたらその部分が編集されてるのかもしれませんが、自分がとんでもないことをしてしまったというのがあったらよかったなと思います。植田先生はそういうの得意そうなんだけど…。
榛名さんはさすがの貫禄。本来の主人公の役で、本作では主人公ではないにしても見せ場が多かった気がします。内容が内容なだけに、本来の南風さんの相手役であるネッシーさんよりも、南風さんとのシーンが多かったですね。こういう演出は好きです。専科だからといってトップをおいて主人公をやってしまうより、話の中心として回していくものの、トップを台無しにしないというか。
紫苑ゆう(シメ)さんはニコライ。ナターシャの兄でアンドレイとも友人という立ち位置。相変わらずの貴族専科っぷり。植田先生はネッシー×シメが好きですよね。ネッシーさんの退団公演で二人に「ジェラシー」でデュエットさせましたし。最近あまり評判のよくない植田先生ですが、私はこの時代の植田先生はすごく良いと思います。植田作品のシメさんの貴族っぷりは結構良い感じですし。
そして最後、ネッシーさん。アンドレイの出番はそう多くないけど、多くないからこそのトップの包容力がわかる作品だと思いました。そこにいなくても、舞台をいい意味で包み込んでるんですよね。彼の話を他の人がするたびに。ネットで感想を読んでみると、最後に許して死ぬのなら最初から許してあげたらいいのにというのを散見しましたが、あれこそ、包容力のあるアンドレイの愛だと私は思いました。自分の死期がわかっていたからこそ、冷たくすることで自分より別の誰かを愛して幸せになってほしいという思いと、それでも他に行かない彼女をみて(若干ピエールに対して危なかったように感じましたが)このままだと、ずっと自分のことを思ってどこにもいかなそうだからこそ、最後の最後に許すことで、彼女の罪悪感を少しでも軽くしようとする器の広さ。本当にかっこよくて、この作品でネッシーさんに落ちた人が多いのがわかる気がしました。ネッシーさんの良さは、貴族と革命家(実は元貴族)というようなのを、元々ある気品やさりげない所作で両立できてしまうところですよね。この作品では、その自然な貴族っぷりが遺憾なく発揮されてたと思います。
この作品は現在まで再演されていませんが、包容力と貴族っぷりが似合う人が出てきたらぜひ再演してほしいです。

Morten Harket.jp (http://www.morten-harket.jp/)の中の人。
二児の母で、フルタイム勤務しつつ、ノルウェー語の勉強をしています。
現在、NORLAからサポートを受け、ノルウェー語の詩の翻訳を実施中。


