ノルウェー語

SKJとKJ,「~って知ってる?」についてノルウェー語で考えてみた&「妨害」のレベル

先日のノルウェー語レッスンは作文チェックでした。このCの部分です。

「ケータイ電話は、私たちの生活を管理している」という主張について議論する。「ケータイは親戚や友人との連絡に重要だ」とする人がいる一方で、「ケータイは人と人の集まりを邪魔する存在である」という人もいる。あなたはどう考えるか。

私としては、必ずしも人との集まりを邪魔する存在でなく、たとえば90年代には3人以上で集まるとなれば、誰かが仲介役になって複数回電話する必要があったけど、スマホでSNSがあたり前になった今は、3人以上が同時にチャットで会話できて、以前より時間かけずに会う予定を決めることができる反面、いつでもどこでも捕まってしまうという欠点があるわけで、一概に邪魔とも重要とも言えないなとういのが本音です。まあ、実際自分自身、友人とは連絡が取りやすくなった反面、ノルウェー旅行中に(旅行中とは知らない)母から電話があって叱られたこともあったりします(笑)

skjとkj

さて、叱られるというのは、ノルウェー語では「叱る=å skjenne på」だそうですが、skjenneといえば、「å kjenne」(知る)という単語もあり、発音の違いが難しいです。、skjとkjの「しゃししゅしぇしょ」は非常に音の違いが取りにくいです。(少なくとも私には)

先生曰く、日本語の「し」に近いのは「skj」で、「kj」は「し」と「ひ」の中間みたいな感じとのこと。思わず「私は江戸っ子だからしとひは混ざるんだよ」と意味不明なことを言ってしまいましたが…。江戸っ子の「しとひ」の話を聞く度に、「もしや江戸時代は、ノルウェー語のSkjとKjみたいに違う音だったのでは…?で、江戸っ子はそれが苦手だったのでは」と思ったりします。

知ってるとは…?

さて、kjenne(知る)が出てきたところで、もう一つ「知ってる問題」についても改めて聞きました。説明するよりも見て貰ったほうがわかりやすいので、グーグル翻訳を貼り付けてみます。

どうでしょう、異なる文章なのに翻訳が全く一緒になっていて区別がつきません。

先生曰く、kjenneを人に使う場合、「個人的に知っている」を意味するそうで、最初の文章は「私は彼とは知り合いではない」(個人的には知らない)ですし、「Kjenner du Morten Harket?」は「モートン・ハルケットと知り合いですか」ということになります。更に、「Vet du Morten Harket?」というような言い方はしないそうです。するとしたら「Vet du hvem Morten Harket er?」(モートン・ハルケットが誰だか知っている?)だそうです。

kjenneはanerkjenne(認知する,表彰する)とか、godkjenne(承認する,認可する)といった単語の一部になっていたり、恐らくkjendis(有名人)という語のkjenも、この単語から来てるか、関係あるんじゃないかと個人的には思ってるんですが、なんとなくですが、他の単語の要素としても「よく知っている」というイメージが前提にあるんじゃないかと想像しています。(有名人とは知り合いにはならないけど一方的な感じでよく知っているイメージになるかなと)。また、kjenneには触れるという意味もあるそうで、うっかり「å skjenne på」(叱る)を「å kjenne på」と書き間違えると、触っているイメージになってしまうそうです。

vetはというと、元の形は「å vite」で、この単語の入っている名詞を探すと「vitenskap(科学)」「musikkvitenskap(音楽学)」「naturvitenskap(自然科学)」「statsvitenskap(政治学)」というように、なんとなく学問のイメージ。そのせいなのか、viteの場合は、「vite 」の後に「~について」を意味する前置詞がついたり、関係代名詞がつくという形が多いようで、「Vet du Morten Harket?」な言い方はしないそうで、たとえば以下のようなパターンでは「Vet du hvem Morten Harket er?」を使うそうです。(私にとっては、よくある会話のパターンです)

(ノルウェー人から)「なんでノルウェー語勉強してるんですか」
「あの、Morten Harketってわかりますか。a-haのボーカルの…。彼の大ファンなんです。」

Hvorfor lærer du norsk?
Vet du hvem Morten Harket er? Vokalisten til a-ha. Jeg er en stor fan av ham.

ありがちな「~って知ってる?」のところに映画を入れる場合は「Vet du hva ”となりのトトロ” er?」とか出来るねという話なんですが、では、ここでありがちなパターンもう一つ。(ラジオや有線を聞いていて)「この曲知ってる?」は?

改めて考えてみると「この曲知ってる?」とか「この俳優さん知ってる?」は、「この曲のタイトル知ってる?」だったり、「この曲私は初めて聞いたんだけど、あなたは聞いたことがある?」だったりするわけで、俳優さんについても「この俳優さんの名前知ってる?」「この俳優さんが演じてるの見たことある?」とかだったりしますよね。更に出来事だったりすると、「~について聞いたことある?」だったり。なので、その都度、「Har du hørt om ~(~について聞いたことある?)」とか、映画なら「Har du satt denne filmen?(この映画みたことある?)」とかに置き換えればよいとのことでした。あたり前といえばあたり前なんですが、日本語だと「~って知ってる?」にかなり集約されてるので、そのままノルウェー語に単語当てはめてもなかなか難しいというところですね。Google翻訳で「ガンダムって知ってる?」とやると「Kjenner du Gundam?」(上の内容を踏まえるなら、ガンダムと知りあいですかということになる)がでるわけで、Google翻訳使うにしても、そういった前提を踏まえてないと間違えそうです。

まとめると、この画像だと上から順に「私は彼と知り合いではありません」「わかりません」「(知り合いか聞かれた場合の)知らないです」「私は誰がこの本の所有者か知りません」「私はこの本の所有者自身を知りません」「モートン・ハルケットと知り合いですか?」になり、最後は文章として間違っているということになります。

「妨害」のレベル

話は変わって。最初の画像を再度貼り付けます。

「Andre mener at telefonene forstyrrer …」の「forstyrrer」。これは「邪魔をする、妨害する」という意味なんですが、割とよく見かけます。ホテルでのいわゆる「Don’t disturb」札のノルウェー語版や、iPhone での取り込み中設定でも出てきます。

これは、私のiPhone画面ですが上から3番目のところですね。

意味をオンライン辞書で調べると「邪魔をする、妨害する」と出てくるのですが、「妨害する」を調べるとこの単語のほかに「hindre」とか「sabotere」という単語も一緒に出てくるので、どう違うかを聞きました。

forstyrreは、「邪魔する」「妨害する」以外に、「干渉する」という意味があるそうで、「Forstyrrer jeg deg?」(直訳:邪魔していいですか?)は、職場などで話しかけるときの「ちょっといい?」というときに使えるそうです。なので、「妨害する」レベルとしては小さめですね。先生曰く、基本的には「干渉する」という意味での「邪魔する、妨害する」とのことなので、そう考えるとiPhoneの設定画面も、ホテルの札も納得です。

「hindre」は、「妨害する」のほかに「予防する、防止する、勢いを止める、阻止する」という意味もあり、このコロナ禍においては「コロナの感染拡大を阻止するために」みたいな文脈でよく見かけます。また、モートンが以前のインタビューで、「起きるかもしれない出来事を一々心配して、そうならないように手を打つことをやめた」という話をしたときにも出てきました。なので、この教科書にある「forstyrrer normalt samvær (普通の集まりを邪魔する)」のforstyrreの部分をhindreにすると、ロックダウンで人に会ってはいけないような感じで、若干、強い意味になるとのことでした。なので、「妨害」レベルはちょっと強め。あくまで自分の印象ですが、「妨害」するために、背景では戦略や計画を練っている感じがします。

sabotereは元々「妨害工作をする」という感じで、戦争とかで使われる言葉で破壊活動が入るようなイメージだそうです。破壊活動のある妨害工作ですから、「妨害」レベルは最大ですね。日本の場合は、「サボる」の語原となったサボタージュと同じ単語が元だと思いますが、日本の「サボる」はそういった物々しいイメージは最早皆無ですね。


レッスンでは、他に「必ずしも~とは思えない」という場合は「nødvendigvis」を使って「Jeg tror ikke at nødvendigvis ~」という風に言うことができるというのも教えてもらいました。(nødvendigvisは「必然的に」で、その前にtror ikke(思わない)がついているので、必ずしも~とは思えないになる)

今回は、作文から始まって、問題文に使われている単語の使い方や、自分が書きたかったがわからなかった単語(=叱られるという単語)や言い回し(必ずしも~とはいえない)について聞いたり、似た発音の部分でどう違うのか聞きまくったりといつも以上に濃い時間になりました。今回のhindre/forstyrre/sabotere の違いとか、kjenne /vite の違いみたいなのは、ノルウェーに住んだりできれば細かいニュアンスとか実生活で感じられるんでしょうけど、そうじゃないので、レッスンでは結構頻繁に「同じ意味の単語をどう使い分けるか」聞いたりしています。

Morten Harket.jp (http://www.morten-harket.jp/)の中の人。 二児の母で、フルタイム勤務しつつ、ノルウェー語の勉強をしています。 現在、NORLAからサポートを受け、ノルウェー語の詩の翻訳を実施中。

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